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 少し前になりますが、またまたパリはバスティーユのオペラ座で「タンホイザー」を見て来ました(もちろんドレスデン版ではなきゅパリ版)。後から聞いたところによると、パリのオペラ座の「タンホイザー」はその演出にとても人気があってもはや定番の一つと数えてもいいのではという話らしいのだけど、その事前情報が頭にない状態で見に行きました。もちろん、中世の吟遊詩人の話だと思って見始めるわけですが、第1幕のエキセントリックな演出に驚きつつ筋が進んでいくと、20世紀の絵描きの話に置き換えられているらしいということがわかって、まず感激。この舞台設定と、ややエキセントリックな第1幕が、それぞれ別な意味で「パリ」らしいじゃないですか。この演出の人気というのは、こういうややツーリスティックなところに根を張った人気なのかなと思いました。良い意味で。

 第2幕の吟遊詩人たちの競技会の場面は、画家たちのコンクールの場面に置き換えられていて、冒頭はそのコンクールの開催記念レセプションのカクテルパーティーということで、超華やか。客席最後尾から行列を作って入って来て、めかしこんでシャンパングラスを片手に声を張り上げる合唱団というだけで、かなり圧倒されるもの。圧倒されるというか、そのきらびやかな世界に否応なく引き込まれるといった方が正確か。ソリストたちも、客席に降りて来るという演出がたくさん取り入れられていて、あのニナ・ステムの美声を目の前2~3mのところで聴いてしまいました(前から3列目で見ていた。)。まさに陶酔もの、失神寸前。

 第3幕は、荘厳さも出しつつ、ちょっとアンニュイな感じを全体に漂わせていて、まるでフランス映画を見ているみたいな感じ。第2幕があまりに華やかだったので、ただ見ているだけではクライマックスを第2幕に持っていかれたか?という印象を受けてしまいかねないけれど、巡礼者たちが帰って来るところは赦しの印として合唱団全員に大きな十字架の枠を持たせるなど、見た目にも荘厳な感じを醸し出せるような工夫はそこかしこに見られ、良かったです。そして、やはり第3幕はしっとり、でも緊迫感を持って歌いあげられるアリアたちが聴きどころなので、このアンニュイな演出はそれをうまく引き立てているように思われました。エンディングはちょっと衝撃。絵的にではなくて、ストーリー的に。全然違うじゃん!と。

 演出を変えたことによる無理は多少生じているとはいえ(なんで20世紀に淫行の罪のためにローマに赦しを乞いに行かなければいけないのか、とか)、オペラそのものをぶち壊すことなく、スマートにアレンジされた演出で、これがパリの定番の地位を確立していることは十分納得できました。冷淡と言われるパリの観客たちも、ブラボーの嵐、カーテンコールの時には全員総立ち。こんなのパリで初めて見た…。

 前回の「サロメ」ではオーケストラの質についてコメントしましたし、今回もオーケストラはとても素晴らしかったのだけど、演目の性質上、やはり歌に目がいくわけで、特に女声陣、素晴らしかったです。タンホイザー役は、パリでは今回が初舞台ということで、女声陣と一緒に歌うとちょっと引けを取る部分があるかなぁという感じが正直してしまったけれど、それでもこれから自分のスタイルを確立してまだまだ伸びるだろうなという可能性を感じさせてもらいました。エリーザベト役もそれなりに若手だったのだけど、コンセルヴァトワールを首席で卒業したという経歴が示す実力はやはり本物で、第1幕のアリアはまさに圧巻。そして、やはりニナ・ステム。ほんの10秒ぐらい目の前で歌ってくれたというのもあるけれど、近い距離で聴く時に限らず、あの存在感はすごい。あの声の張りと表情の豊かさ。すごい人だとは思っていたけど、今回ですっかりファンになりました。

 つまり、何が言いたいかというと、すごく良かった、オススメですということです。オペラをテレビの画面で見るのってよくわかんないなって思っていたんだけど、これは演出がとても面白いので、DVDがあるなら欲しいかもとか思ってしまうほどでした。
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